こんにちは、okeydon(おけいどん)です。
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つい最近のニュースでも取り上げられていましたが、リース取引の会計基準変更が議論されています。まだ議論は続いており、実際に変更になるまでにはまだ2〜3年要すると言われていますが、リース会社に投資している身としましては、気にしておくべき事案です。
このリース取引の会計基準変更がリース会社に及ぼす影響はどのくらいあるのでしょうか。
まずは、どう変更されるのか説明しましょう。現行は「企業」(=オリックスなどリース会社の顧客となる企業。以下、「」付きの「企業」表記は同様の意味。)の貸借対照表にリース取引を記載する必要はありませんが、ルールが変更されれば、リース金額を明記する必要が生じます。国際基準に合わせることになるのです。これにより「企業」のリース離れが起きる可能性があります。
続いて、リースの種類を説明しましょう。リースには大きく分けて2種類あります。ひとつは「ファイナンスリース」、もうひとつは「オペレーティングリース」です。
「ファイナンスリース」は、資金調達手段のひとつとして金融色が強いもので、OA機器やパソコンなどに多い。実態としては、ローン契約でモノを購入したことに近いです。あなたのデスクにあるパソコンもファイナンスリースかもしれません。こちらは既に、「企業」の貸借対照表に計上されており、今回 変更はありません。
「オペレーティングリース」は、賃貸借色が強いもので、自動車、建設重機、船舶、飛行機、建物、倉庫など耐用年数の長いものが多い。例えば、日本の航空会社の旅客機もオペレーティングリースであることが多くあります。また、あなたの会社の営業車もそうかもしれません。今回 検討されている会計基準の変更が影響するのは、このオペレーティングリースです。
「企業」がオペレーティングリースを利用するメリットは3つ、オペレーティングリースする資産(営業車や倉庫など)を貸借対照表に計上する必要がないこと、リース代金を経費に計上するだけで会計処理が簡単であること、初期費用が抑えられることです。会計基準が変更になると、「企業」にとって、初期費用が抑えられることに変わりはありませんが、貸借対照表に資産計上することが必要になり、毎年 減価償却する会計上の手間が増えます。また、投資家が重要視する指標のひとつROA(総資産利益率)にも影響します。
そういうわけで、「企業」のリース離れが生じる懸念があるということです。
このニュースを受けて、リース会社の株価が下がりました。報道当日となる3月8日は日経平均株価も大きく下げ、前日比-2.01%でした。対して、主なリース会社の株価の動きは次の通りです。
オリックス -2.44%
東京センチュリーリース -4.71%
三菱UFJリース -3.18%
芙蓉総合リース -4.01%
興銀リース -3.47%
日立キャピタル -3.83%
リコーリース -2.33%
ご覧のように全社が日経平均のパフォーマンスを下回りました。
このうち、僕okeydonが投資しているリース会社は、オリックスと興銀リースです。今後の業績にどのような影響があるのでしょうか。
先にオリックスから。
2018年3月期 有価証券報告書で確認してみました。
(資料引用:オリックス 2018年3月期 有価証券報告書より)
営業収益(売上) 2,862,771百万円
うち、オペレーティングリース収益 379,665百万円
シェア 13.3%
オリックス全体の営業収益に対するオペレーティングリース収益の割合は、13.3%となります。多角経営であることが窺えます。
(資料引用:オリックス 2018年3月期 有価証券報告書より)
オペレーティングリースの収益 379,665百万円
オペレーティングリースの原価 252,327百万円
売上総利益(粗利益) 127,338百万円
粗利益率 33.5%
粗利益率が33.5%と、オペレーティングリースが大きな利益源であることが分かります。
オペレーティングリースの新規実行高の国内外割合を確認しましょう。
新規実行高合計 495,609百万円(対前年 +93,696百万円)
うち国内 215,832百万円(対前年 +8,073百万円)
うち海外 279,777百万円(対前年 +85,623百万円)
新規オペレーティングリースのうち、会計基準変更の影響を受けるリスクがある国内の割合は2018年3月期43.5%、2017年3月期51.7%です。
よって、オリックス全体の営業収益に占める国内のオペレーティングリースの割合は、5.77〜6.86%と予想できます。
【オリックスの営業収益(売上)に占める国内オペレーティングリースの割合】
(円グラフ化する上で、国内オペレーティングリースの数値は5.77%と6.86%の平均値を採用しました。)
さらに、オペレーティング対前年の伸びを見ると、国内が+4%であるのに対して、海外が+44%と圧倒的です。海外案件に注力していることが分かります。
これらを鑑みた結果、リース取引の会計基準変更によるオリックスへの影響は軽微であると予想します。
続いて、興銀リース。
こちらの有価証券報告書からは、オペレーティングリースの売上や利益は分かりませんでした。
しかしながら、興銀リースに関するニュースを見ると、前途はそう暗くないように思えます。
最近のニュースでは、みずほFG(興銀リースは同グループです。)は、みずほ銀行と興銀リースが資本・業務提携して、社名を興銀リースから「みずほリース」に変更する(2019年6月)と発表しました。そして、海外にルートを持つ丸紅と連携して、航空機リースなど海外の高収益リース案件に注力するということです。
また、これは1月のニュースですが、インドネシアのオートファイナンス(自動車リース)会社PT. VERENA MULTI FINANCE Tbkを連結子会社にしました。
リース取引の会計基準変更は国内のことであり海外案件には関係がなく、また低金利の国内から海外の高収益案件に舵を切ることも評価できます。海外に活路を見出すというのはリース会社として自然な流れと言えます。
というわけで、僕okeydonが投資しているリース会社2社(オリックス、興銀リース)への、リース取引の会計基準変更が及ぼす影響は大きくないと分析しました。
また、この会計基準変更については過去から議論されていることでもあることから、その他のリース会社でもしかるべき対策は講じていると予想できます。
と、分析、予想しましたが、モヤモヤが残りますので、オリックス、興銀リース、またせっかくの機会ですので、その他 主要リース各社に問い合わせてみようと思います。
投資判断は、自己責任にてお願い致します。
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